「君のとなり」
※おまけ的な加→米なポエム
世界が揺れていた。 その世界に覚えがある気がした。ふわふわとした感覚。 身体も揺れている。そう思った途端、これは夢なんだと直ぐにカナダは思った。 ―――だって夢の世界でなければおかしい。 そうでなければ、目の前で佇むアメリカの姿を説明できないし、混乱してしまう。 アメリカは、いつの間にか大きくなっていた。 自分の知っている子供の姿ではなく、濃紺色の服を着た青年の姿にカナダは戸惑った。 知らない姿のアメリカは、じっと前を見て怒ったような顔をしていた。唇を引き結び何かに傷付いているようにも見えた。或いは怯えているのかもしれない。ゆらゆらと揺れる世界の中で、同じようにゆれる青い瞳。カナダはどうして良いか分からないまま、オロオロとただアメリカを見つめた。 左手のマスケット銃をギュウっと強く握り締め、目に一杯の涙をたたえて、アメリカが何かを堪えるように俯いた。瞬間、零れ落ちる水滴。それを拭ってあげたいとカナダは思ったが、どうしてか指ひとつ動かせなかった。 アメリカの涙は止まらない。 止まる事無く流れ、零れ落ちるばかり。 何もできない。だってどうしても身体が動かない。 『ねぇどうして泣いているの?』 どうする事も出来ないカナダは、もどかしく思って泣き続けるアメリカに聞いた。心の中で、泣き止めば良いのにと思う。 アメリカは涙を流したまま「寂しい」と言った。 寂しくて泣いているんだと。 『どうして?君にはイギリスさんがいるだろう?』 宗主国イギリス。この北大陸の事実上の覇者であり、カナダとアメリカの保護国でもある欧州の強国。 そしてそのイギリスは、子供たちに向って自分達は兄弟で家族なんだと言った。だから一緒にいるし、少し離れていても寂しくないのだと言った。その言葉をカナダは素直に信じた。何故ならば、イギリスとは海を隔てていたけれど、隣国である三国、特にアメリカとイギリスは気が付けば身を寄せるように一緒にいたからだ。 『イギリスさんは、僕達は家族だって言っていたよ?』 イギリスはいつもカナダとアメリカの味方だ。 それは疑いようが無い事実だ。 『だからそんな顔をしないで?』 それでもアメリカの声は引きつったような音で、涙ばかりが溢れる。寂しい哀しいと呟く。 『いつもみたいに笑っていてよ!僕は絶対に君のとなりにいるから・・・!』 『・・・ねぇ、泣かないで』 ―――その瞳に星の煌めきを宿したまま、どうか前を見続けていて? 終 |
※これを本編にして加米を書こうと思って挫折しました。カナダは片思いが似合うなと思いました。ごめんねメイプル。
------------- 御影白夜様(HPロマロマ。)が「Tin Waltz」(米受けべやの外に飾らせていただいてます。米英+加です)の、続き設定として「シーツの海、夢の国」を書いてくださり、さらにおまけまで書いてくださったので ですがほら、「シーツの海、夢の国」はこちらの作品とセットになってこそより輝くといいますか、引き離したらいけないわ! と感じたもので…。 御影さまのところの加は不憫なところがまた美しいと思います。 大好きです!(主張) |
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