この話は、コーニッシュのCD<「ヘタリア World Series」サウンドワールド>収録の<We Wish You a Merry Christmas (連合が歌うよ♪バージョン) >ネタで構成されています。 ※ネタバレを含みますので、「これから楽しみに聴こうと思ってるのに…」という方はご覧にならないことをお勧めします。 ネタバレは気にならないけどCD聴いてないからネタわからん、教えて、という方は↓↓ ●ネタバレ的状況説明(以下反転) メリークリスマース!! 今回もいつもの5人で集まって、 ・アメリカのおよそ食品とは思えない色のケーキにケチつけたり、 ・イギリスの料理にケチつけたり、 ・フランスがサンタにワイン飲ませたり、 ・ろったまの家では25日を過ぎるとジェットマロースが動き出したり、 ・中国さんちのクリスマスは何か違ったり、 と、楽しくクリスマスソングを合唱・輪唱するのですが、最後は アメリカ「ところでさっきから変な気配がしないかい?」 カナダさん「初めからずっといたんだけどな……」 今回も連合は、安心のカナダさんオチ!!! という大変楽しいCDです。クリスマスのパーティーシーンで大活躍まちがいなし。宗教超えて、みんな買ってね☆ (ネタバレここまで) OKな方はどうぞ!! 激短ですが! ホリデイのためのショートショート 「ちょっとアメリカ! ひどいじゃないかぁ……」 消え入りそうな声に振り返ると、そこにはアメリカと瓜二つだけれどちっとも目立たない、兄弟分が立っていました。何やら怒っているらしく、わなわなと握りしめた拳を震わせていますが、迫力などこれっぽっちもなかったので、アメリカはわざとその様子にはまったく気づかないフリをしました。 「わぁ、カナダ、いたのかい?」 「『わぁ、カナダ、いたのかい?』じゃないよ! さっきだって何が『なんか変な気配がしないかい?』だよ! 初めから僕だってわかってたくせに! 君が手伝え手伝えってうるさいから来たのに、こんなのあんまりじゃないか……」 ぐすりと男らしくもなく涙を滲ませたカナダに、さすがにやりすぎたかもしれないとアメリカはちょっぴり反省します。 いつもの軽いジョークのつもりでしたし、カナダだってそういうネタでいじられるのはもう慣れっこのはず。今更そんなふうにガタガタ騒がなくたっていいものだと思いますが、カナダはちょっとやそっとじゃ機嫌を直してはくれなさそうです。 「だってロシアが怖い話するし、俺だけ怖がってるのは癪だったんだぞ。みんなだってちっとも疑ってなかったじゃないか」 「あーそうですねはいはい、どうせ目立たない僕がいけないんですよーだ」 なんだか開き直ってしまったようです。アメリカにやりこめられて戸惑いながら涙を浮かべているようなうちはいいのですが、こう、完全に突き放すような態度を取られると、今度はアメリカが慌てなくてはならない番でした。 「ちょ、ちょっとカナダ、どこ行くんだい……? 一緒にケーキ食べようよ! フランスもイギリスもあっちで酔っ払ってうるさいし、ロシアと中国はなんか怖い話してるし……!」 「知らないよ。アメリカは僕と違って目立つんだから、存分に相手してもらえばいいじゃないか。じゃ、僕忙しいし帰るから!」 完全に吹っ切れた様子で、あっさりコートを羽織りだしたカナダの腰にしがみついて、必死に引き留めます。 ここでカナダに置いて行かれたら、すでにほぼ全裸のおっさんたちにさんざん小さい頃のネタでからかわれるか、得体の知れない大国たちが呪いだの風水だのについて語り合っているのに混ざるか、一人寂しく讃美歌を独唱しながらケーキとごちそうを頬張るかの三つに一つなのです。一年に一度のクリスマスに、そんなのはごめんでした。 「い、忙しくなんかないくせに! 置いて行かないでくれよぉ……!」 「君、さんざん僕のことからかっておいて、この期に及んでなお失礼だな」 いくら腰にすがりついて踏ん張ってみても、開き直ったカナダは容赦がありません。ずるずると、玄関先まで引きずられていく羽目になりました。 「悪かったよ、俺が全面的に悪かった! 俺と君の仲じゃないか! ちょっとした冗談くらい、親愛の情だよ、親愛の情!」 「君ねぇ、そうやって何でもかんでも許されると思ったら大間違いだよ」 「うぅ……ダメなのかい?」 涙の滲んだ目で、上目遣いにのぞき込む――イギリスもカナダも日本も、アメリカのこの顔には弱いのです。アメリカはそれを知っていたので、これでカナダも機嫌を直しただろうと決めつけました。 ところが少しでもによっとしたのがいけなかったのか、カナダは容赦もなくアメリカの額にチョップをくれました。 「いたっ!」 大げさにため息をつき、じとりとアメリカを横目で睨みます。 「君のそういうとこがムカつくよな……」 「えっ、じゃ、じゃあ……許してくれないのかい……?」 まさかこんなに本気で怒るとは思っていなかったのです。アメリカが何をしても、結局アメリカの横で文句を垂れている、アメリカにとってカナダはそういう存在でした。 悲しくて俯いていると、殴られてひりひりする額に、そっと柔らかな感触が落とされました。 「本当にムカつくよ……」 額に唇をつけたまま喋るものですから、少しくすぐったくてアメリカは笑いました。調子に乗ったのか、カナダはほっぺたやら首筋やら髪の毛やらに手を滑らせ、同じように笑いました。 「一緒にケーキ食べよう」 「そうだな! がんばって作ったのに、イギリスしか手をつけてくれないから、余って仕方ないよ!」 やがて立ち上がった兄弟は手を取り合って、四人しかいないとはとても思えない、騒がしいパーティー会場に戻っていきました。 お互いに、口を開いたのは同時でした。昔から、この片割れはタイミングを外さないのです。 「I wish you a Merry Christmas and a Happy New Year!」 (2010/12/24)
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