――早く来て、まだ? 何を待っているのかもわからないまま、ちらちらと時計を見て、ドアを見て、携帯を見て、ため息をつく。 ――まだ? いつまで俺をひとりにするの? 一人なんかじゃない、今だってこんなにたくさんの人が集まってくれているじゃないか。 寂しくなんかない。 不安でもない。 だって今日は素敵な素敵な、待ちに待ったクリスマスイブ! 仕事は休みになって、盛大なパーティを開いて楽しく過ごして、夜には静かなミサで祈りを捧げて、明日の朝にはサンタクロースからすごいプレゼントをもらって――。 「じゃあなアメリカ、楽しかったぞ」 ――全然寂しくなんかない。 「今日はお招きありがとうございました」 日が傾き、クリスマスイブのミサの時刻が近づけば、それぞれ大切な人と聖夜を祈り過ごすために帰って行った。 「本当に、元気がないようですが大丈夫ですか?」 日本やリトアニアは最後まで心配そうな顔をしてくれていて、申し訳ないなぁ、と思いつつ「平気だぞ!」と笑い返せば、それで本当にパーティはお開きになった。 「それでは、よいお年を!」 ――よいお年? よいお年って、どんなだったっけ? 先程まで賑やかだった部屋が、しんと静まり返っている。 アメリカもいつものように近所の教会に出かけようと思っていたのに、どうしても出かける気になれない。今ここを離れたら、あいつが来た時に困るじゃないか。 あいつって誰? そもそもミサって、一人で行くものだったっけ? (2008/12/25)
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