――ようやくわかった。何かが足りない。 家の飾りつけをすっかり終えて、すっきりした気持ちで床についた。翌朝、待ちに待った24日には、少し早い時間に目を覚まし、ごちそうに最後の仕上げを施し、買い漁ったパーティグッズや大量のコーラを取り出してすっかり準備も万端となると、見計らったように、続々と招待した各国も現れた。 「よぉアメリカ! 今年も上等のシャンパン持ってきてやったぞー」 「べ、別にお前のためじゃないけどお前んとこのジャンクフードばっかじゃ他の国に失礼だからな!」 金色のボトルを上げて誇らしそうなフランスに、焦げくさい大きな包みを抱えてそわそわと落ち着きのないイギリス。 メリークリスマス! メリークリスマス! 人を幸せな気分にさせる魔法の言葉。訪れた誰の顔も輝いている。 世界の仲間たちににこやかに応対しているうちに、アメリカは気がついた。楽しいはずなのに、どこか自分は寂しい気持ちでいると。 はじめから些細な違和感のようなものは抱えていたのだ。けれどその正体が何なのかはわからないまま。とにかく自分の半分がごっそりなくなってしまったかのような寂しさが募るばかりで、楽しい楽しいパーティの真っ最中だというのに、皆が楽しそうに笑えば笑うほど、やはり何かが足りない気分は増していくのだった。 目の前には、文句を言いながらイギリスが毎年焼いてくれる大きな大きな七面鳥。アメリカ特製の緑と赤のクリスマスカラーをあしらったケーキ。豪華に飾り立てられたクリスマスツリー。酔ったイタリアがカンツォーネ調に熱唱する賛美歌。フランスから贈られた上等のシャンパン。ドイツの木製オーナメント。 クリスマスを祝うのに必要なものは全部揃っているのに、いったいどうして、こんなに寂しいのだろう。 どうしたんだよ、どうしたの? ――元気のないアメリカに各国も気づいたのだろう、けれど何が足りないのかは誰にもわからなかった。 皆に合わせて笑って、プレゼントを交換し合って。 いつもは矢のように過ぎ去っていく楽しい時間が、今日はやけに長かった。 (2008/12/25)
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