ロシアのロッカーなんてどれだか知ったこっちゃないが、彼がいつも座っている席ならなんとなく知っていた。東欧の教室の、窓に一番近い、最後部の席。よくここから花壇のひまわりを眺めている。
 ヨーロッパクラスらしく、伝統とやらを感じさせる古めかしい木の机には、傷が目立つ。何となしに指でなぞった傷が、ちょうど「兄さん、結婚」の形に彫り込まれているのだと気づいて、ほんの少し怖くなった。
 ロシアの妹は、大分過激だ。普段は憎らしいロシアが、妹に振り回されている時だけは、なんだか愛らしく見えるのだから不思議だ。
 机の中には、数冊の教科書とウォッカの瓶。こんなところにまで持ち込むとは、もはや誰も止められない。それでも、ぱらりと開いたノートには、几帳面に揃ったキリル文字が並んでいた。彼が泥酔したところを、見たことがない。
 それにしても、ロシアは今どこにいるんだろう。



寮に戻ってロシアを探してみる。
ロシアの携帯にかけてみる。



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