俺は外に出て、とにかくド派手な赤いお城みたいな建物へと向かった。うん、時代モノの映画によく出てくるよな、こういうの。
 朱塗りの柱の上部は、緑や黒やら青やらでうねうねとした模様が描かれ、見上げた天井もまたびっしりとそんなまじないのような文様に覆われていた。黒い瓦の上にはドラゴンのようなモンスターのような人形が鎮座し、低く地を這うような建物の中はランプを模した微かな電灯があるだけで、薄暗い。
 誰かと一緒ならただただ物珍しいだけの建物も、たった一人で、しかも中からも誰の気配もしないとなると、途端に薄気味悪く生温かい風が皮膚の表面を舐めるように感じられる。
 俺は身震いしながら、注意深く左右を確認して先へ進んだ。確かいつも、日本たちが休み時間などによくいる教室がこの辺りにあったはずだ。あそこがきっと彼らのホームルームなのだろう。
 引き戸を開け放つと、そこはシンと静まり返っていた。この教室には椅子がない。どうも床に直接座れと、そういうことのようで、各々薄い木の板や織物、クッションなどを持ち込んでいるようだった。
 日本がいつも座っている席には、紺色の平たく四角いクッションが置かれている。俺の膝丈ほどしかない机には物を入れる場所などはなくて、教室の雰囲気に合うよう木で作られたロッカーが背後に並んでいた。
 どれが誰のものかなんてのは、俺にはわからない。アニメのシールが貼ってあるロッカーはいくつかあったけれど、そのどれもがきちんと施錠されていた。
 ああ、一体日本はどこにいるんだろう。



寮に戻って日本を探してみる。
日本の携帯にかけてみる。



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