フランスのロッカーはイギリスとドイツの間だ。イギリスのロッカーは一番端だから、必然的に端から二番目ということになる。
 モードの最先端、らしい謎の雑誌の切り抜きや、たまに自分の写真や街で出会ったという美男美女の写真が定期的に取り換えられている。ロッカーを開ければ、裏には大きな鏡が据え付けられていることも知っているが、生憎と、きっちり鍵がかかっていた。当然だ。
 試しに装飾品一つない隣のドイツのロッカーも引っ張ってみるが、これまた当然のように俺を拒む。それでも、やはり中には家族の写真やら愛犬の写真やらがひっそり飾られているのを知っていた。
 ついでに古びたロックバンドのステッカーらしきものが申し訳程度に貼ってある、イギリスのロッカーも引っ張ってみたところ、すんなり開いた。
 ……また鍵かけ忘れか。あの忘れ物紳士め。
 中身は変哲のない、体操着やシューズ、教科書、それからなぜか折りたたみ式のチェスボードまである。
 特に面白いものは見当たらない。俺はため息をついてロッカーを閉めた。
 今度会ったら、不用心はよくないぞ、って忠告してやろう。
 それにしても、フランスは今どこにいるんだろう。



寮に戻ってフランスを探してみる。
フランスの携帯にかけてみる。



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