HAPPY INDEPENDENCE DAY!!! from SEALAND


※特定の企業名が出てきますが、リアリティを出すために敢えて作中では伏せません。回し者ではありませんw
 でも英語版見てるとアメリカに想いを馳せすぎて鼻血出そうになるのでオススメです。何も買いませんけど!






 とてとてと、床を鳴らす足音は軽い体重を象徴するかのようなかわいらしいもの。
 大振りの青い帽子は水兵風の。
 その個性的すぎる眉毛は、まだまだ彼が独り立ちには程遠いことを表してでもいるかのようで。当たり前だ、国以前に彼は、打ち棄てられた海上要塞なのだから。
 その自信に満ち満ちた顔は、本当に誰かさん瓜二つで。ずうっと見つめているとまるで世界がゲシュタルト崩壊を起こしたかのような。
 ぐるぐると、言い知れない感情に襲われる。
 その小さな国ですらない個体が、まっすぐ歩いてきたのはパーティの主役、このアメリカ合衆国のすぐ足元だった。
「あげるのですよ! シー君の先輩として、尊敬してますから」
 突きつけられたのはもしかしなくても、気持ちのこもったプレゼント。
 産みの親に似たのか、可愛げもなくすぐに背を向け走り去ってしまう。その背中でぱたぱた揺れる大きな襟が、大海原を連想させた。
 手の中に握らされた紙切れに視線を落とす。
 ギフト券だった。アマゾンドットコム、と大書きしてある。ファニーなデザイン。黄色い下地に、色とりどりの風船が飛んでいる。
「……かわいげのない子供だ」
 かわいげがあるのは額面の25ドルくらいなものだった。恐らく最少価格なのだろう。随分中途半端な、一回ランチでもしたら終わってしまう、とは、黙っておいた。アマゾンだし。本なら2冊は買える。
「前のクリスマスパーティでアメリカが言ったですよー。アマゾンドットコムなら、何でも叶うって」
「もー、シー君ったらいつの間に……。スーさんに頼めば、少しはラッピングしたのに。僕デザインで」
「ネット使わせたら大人顔負けだなぃ」
 体は小さくとも、誰にも恥じぬ独立自尊の精神がある。そんな彼が、大きな声で現保護者に首尾上々の報告をしているのを、ようやく落ち着いた気持ちで眼鏡越しに眺めた。
 あれは、彼の人が、いつぞやの小さな十三植民地の代わりに愛でるものではない。
 どんな子供も、その子自身のために生まれてくるものだ。
 だからこそ愛が生まれうるのだろう。

 世界に平和と愛を。アメリカ合衆国は、この日、一年で一番騒がしい。
 昔日の落陽も暁も何も知らずに、それぞれが勝手な方向を向いて、ただこの日だけは、同じ歌を歌っている。





(11/7/4)

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