11.放蕩夫婦と子どもたち


 正直、朝起きたときから嫌な予感はしてたんだ。
 生徒会長サマは苛立たしげにパンの包装を破りながら、そう吐き捨てた。
 後ろでは爽やかにクリーム色のカーテンが踊っている。ほどよく晴れた空を見ながら、「あぁ、秋だなぁ……」フランスは呟いた。
「聞いてんのか、テメェ」
 途端に飛んできたペンが見事に眉間に当たる。
「痛!」
 まったく、器用だ。
「聞いてるよ、『家の中が妙にがらーんとして寂しく感じた』んだろ? 『まぁ二人揃って買い物にでも行ってるのかもしれないけど、と思いながら階下に降りると』」
 べらべらと、恐らくイギリスが言いたいであろうことを続ける。会長サマはむっつりとクロワッサンをくわえ、押し黙っていた。
 話なら聞かなくてもわかっていた。およそ十数年前に起こったことをそのままなぞっているだけだから。
「一枚のメモがあったってわけだね!」
 まったくいつもながら唐突である。
 どんな顔で、目の前の不機嫌な会長サマを慰めたものやら、フランスが考えあぐねていると、背後で重たい木製の扉が勢いよく開いた。
「アメリカ!」
 古びた机に、ぼとり、とパンが落ちた。
 途端にフランスの存在は空気と化して、後は会長サマと、たった今やってきた一年坊主の二人きりの時間となる。フランスは人知れずため息をついた。
「俺のとこにはメールが来たよ。二人仲良くしろって。あとちゃんと避妊しろって……」
「何の話だぁああ!」
 今日の弁当はサーモンのサンドウィッチ、デザートは特製のカスタードタルト。この間セーシェルに分けてあげたらえらく喜んでたっけ。ああ、今彼女はどこにいるだろう。
 おそらくは「漫研の部室」だとか称するあの倉庫だろう。冷房もない狭い部屋だが、最近はめっきり涼しくなったから、彼女はよく生徒会室を避けて、あちらに避難している。
「で、どこに行くとかは」
 会長サマが身を乗り出すと、豪華なイスのキャスターが擦れて耳障りな音を立てた。対する一年坊主はそっけなく、制服の肩を竦めただけ。
「あの人たちがそんなこと教えてくれるわけないじゃないか! ちなみに返信したメールも返ってきちゃったんだよ。徹底してるよね」
 賢明だ。極めて賢明だ。
 どこぞのバカップルが毎日無自覚にイチャイチャ見せつけてくれちゃう生徒会室なんかよりは、日本が人間業とは思えない技術で、白い紙に萌えという名のロマンスを生み出していく倉庫、いや部室の方が、いくらか心落ち着く。
 フランスさんも、いいネタを持ってきて下されば、いつでもお寄りいただいて構わないのですよ?
 頭の中で、物静かな、それでいてどこか弾んだ声がリフレインしている。そうしていれば目の前の兄弟もといバカップルの会話が聞こえなくなるのかといえばそんなこともなく、フランスはため息をついて立ち上がった。
 ――逃げよう。
「あ、どこ行くんだいフランス」
 目敏くもフランスの存在を最初に思い出してくれたのは空気読めない空気読めないと評判の弟の方だった。
「君、今日『ウチ』にご飯作りに来てくれていいんだぞ!」
 感動しかけたのも束の間――ああ、狙いはソレかい。
「ばっ、お前、来る気かよ!」
 これは俺に向けてのセリフじゃない。そういうとき、この子はこんなに顔を赤らめたりはしないんだ。
「何言ってるんだいイギリス、あそこは俺の家だろう?」
「そ、そうだけどお前な……ふ、二人っきり、だし」
「何か問題あるのかい?」
「え、いや……その……」
 ああもうイライラする! イギリスてめぇエロ大使のくせに今更カマトトぶってもじもじしてんじゃねーよ!
 ――と、叫びたいのをグッとこらえて、フランスは静かに、秋だというのに夏に逆戻りしたかのような生徒会室を後にした。



 イギリスは、もう何度目か、窓の外を覗き見てはため息をつく作業に飽きて、イライラとお湯を沸かし始めた。
 わかっている、わかっている。あの二人が息子も携帯もかなぐり捨てて旅に出たのだ、二、三日で帰ってくるキャンプのつもりはあるまい。
 いったいどういうつもりなんだ。
 もう腰を落ち着けてくれたのだと思った。幼いアメリカと、まだ学業の半ばにあった自分を置いて家を出たのは許されざることだった。だがそのことを反省して戻ってきてくれたなら何も言うまい、そう思っていた。
 お湯が沸くのを待つ間、イギリスは何気なくテーブルの表面を撫でた。まさにこのテーブルに、そっけない一枚の紙切れだけが残されたのだ。数年前も、そして今朝も。
 父はどこまでも自由を愛する人だ、知っている。土地だとか仕事だとか子供だとか、そんなことに縛られるのさえ厭う。そして母はそんな父を愛し、その父もまた母を愛している――。手を取り合って、広い世界を生きていくのだ。
 ならば、自分は?
 もはや父との愛に生きる母にとって、父の子でない自分は、単なる荷物でしかないのだろうか。
 ああ、いつもそうだ。イギリスは誰からも必要とされていない。
「……こんなことで腐るなんて、ガキみたいだな」
 自嘲気味に笑って、呟く。耳障りな音を立てたケトルを、静かに火から下ろした。
 昔、両親が消えたときには、もっと強くいられた。自分の存在価値を考えるだなんて非建設的な作業に没頭したりせず、強く、現実を生きるしかないのだと思えた。
 それは、守るべき弟がいたからだ。
 けれどその弟が出て行ってしまった日も、こんな風に自分は腐っていたっけ。
 みんな、みんな行ってしまった。イギリスを置いて。
 もはやイギリスを必要とする者は一人もいない――。
 ぎゅう、と作業台の上で両手を握りしめた。今ならこのまま消えてしまえそうな気がした。生きていたいとも、生きているべきだとも思えなかった。
「――沸騰したお湯をすぐ入れなきゃ、おいしいお茶は淹れられないって、君いつも言ってるじゃないか」
 ふいに、ごく当然といった調子で、ひとりきりのはずのイギリスに声がかけられた。油断しきって思案に沈んでいたイギリスは飛び上がりそうになる。
「え、あ」
 大した言葉も発せずに振り返ると、窓からアメリカの顔が覗いていた。
「鍵変えたの? 陰険だね。寒いから入れてくれないかい?」
 もう父も母もいないのだから、無理して今も兄弟仲のよいフリを続ける必要はない、あんな親も、もうイギリスがけなげに待ち続ける必要はない――衝動的に取った子供じみた行動を指摘されて、イギリスは俯いた。
「帰れよ」
 かなり棘を含ませたつもりだが、帰ってきた声はどこまでも天衣無縫だ。繊細さのかけらもない、と思う。
「どうして、だってここは」
「おまえの家じゃねーよ」
 遮った。自分はうまく表情を取り繕えているだろうか。
 軽く目を見張ったアメリカに背を向けて、何気ないふりでお茶の用意を始めた。茶葉を掬う手が、わずかに震え、細かなかけらが散らばった。
「みんなそうだ、勝手に出て行って。勝手に帰ってきて。俺がどんな思いをしたかも知らねーで、『俺の家』だ? ふざけんなよ」
 わかっている、やつあたりだ。今更不平を言うべき問題でもない。
 イギリスが勝手に残っただけで。勝手に裏切られたような気がしているだけで。
 お湯の中で茶葉が踊る。じわりじわりと、染み出していく。
 じわりじわりと空気を染めて、イギリスのどす黒い気持ちが滲み出ていく。
 長い長い沈黙のように思えた。わざとらしくため息をついて、紅茶をカップに移していく。これ以上置いていたら、濃くなりすぎてしまう。
 赤い液体があふれ出しそうになって、知らず知らずのうちに二人分の紅茶を淹れてしまっていたことに気がついたイギリスは、おそるおそる振り向いた。窓にはもう、誰の姿もない。
 ああなんと愚かな。感情をぶつけてすっきりしたはずなのに、寂しい、だなんて。嫌われたくないのなら、イギリスが我慢しなければならなかったのに。「いつものように」。
 捨てることもできずに余った紅茶を持て余していると、いきなり後ろから抱きつかれて、あやうく熱いお茶をこぼしそうになった。
「な! え? な……!」
「ごめん」
 小さく、呟くような唇の振動は、単なる独白のようだった。
 けれどそれだけでじわりと胸が熱くなって、何もかも許してしまいたくなるイギリスは本当に情けない、と思う。けれどきつく抱きしめられると、自分の葛藤であるとかプライドであるとか、そういうものはみんなどうでもいいことに思えた。この腕がイギリスを求めてくれる限り、イギリスは生きていられるから。
「俺は君の弟であることを自らやめたんだ。……あの人たちは」
 どうだか知らないけど、とアメリカはイギリスを離さずに言った。
「俺はそのことを後悔してないけど……ここがまだ、君と俺の大切な『家』だって、俺が、そう思うのは厚かましいことだよね、……ごめん」
 滅多に聞くことのない弱気な声音に、ほとんど状況反射で口が動いた。
「そんなことねぇよ!」
 ここはまだ、お前の家だよ。お前が「帰ってくる」のを、……いや、「来てくれる」のを、いつもいつも待っている。
 さっきまでの怒りはどこへやら、愛しい胸に縋りつこうとした腕は、寸前で固まった。
 およそ今までのムードにはふさわしくないニヤニヤ笑う顔がそこにあったからだ。
「君、そういう単純なとこ、かわいいよね」
「おまっ、からかったな……!」
「イギリスのくせに俺を邪険にするからだぞ」
 ひょい、と勝手にカップを取り上げて、紅茶を飲みながら目を逸らしたアメリカの青い瞳はやや潤んで揺れていた。
 ああ、こいつは。
 大きな声と明るい笑顔で、すべて掻き消す術を、いつの間にか身につけて。けれどやっぱり中身はあの、泣き虫で寂しがり屋だったアメリカのままなのだ。
「……愛してる」
 自分が何を口走ったのかはっきり自覚する前に、アメリカの口から、綺麗な放物線を描いて紅茶が飛んでいた。
「ど、どどどどうしたの、熱でも」
「ねーよ! きたねーな……」
 悔しいけれど、負けだ。いつだってイギリスは、弟のはずのこの男のペースに呑まれっぱなしで、いつの間にかこんなに愛して、依存してしまっている。
 完敗だ。
「……お前だけは、俺に黙って消えたりしないよな……」
「言いたくないけど、俺の頭はいつも君でいっぱいだぞ」
 前半部分に抗議をしようか迷って、やめた。代わりに、子供じみて扱われることを極端に厭うようになって帰ってきた彼が、もっとも嫌がる笑顔で、笑ってやった。



 もうずいぶん長いこと時が止まっていたその部屋には、最近、不思議な時間が流れている。
 よっこいしょと掃除機を抱えながらドアを開ける。目に入るのは、子供用の学習机に子供用のおもちゃ、それだけを見れば、学校に入り立ての小さな小さな子供の部屋のようであるが、学習机には新聞やCD、コミック、小さな字のびっしり詰まったペーパーバックが無造作に積まれていて、それらはおよそ小さな子供の持ち物としてはそぐわなかったし、最近持ち込まれたポスターには、アメフト選手が汗を散らす様子が映っている。見るからに大きなサイズのジーンズやスウェットがベッドの上に無造作に投げ捨てられているのは、何度注意しても直りそうにない。
 小さな子供からティーンへの過渡期を現したかのようなその部屋だが、実は持ち主はティーンも後半にさしかかった、見た目はもうがっしりした大人であった。
 ベッドのリネン類が、収まり切らない震える青春を持て余したかのようなこの部屋で、また一際異彩を放っていた。精巧な刺繍がほどこされたクラシカルな落ち着いた色合い。薔薇とアクレイギアがいいとせがむから、後ろから圧し掛かってくる体重にも負けず、イギリスが最近作ってやったものだった。
 変に合理主義なところのあるアメリカが、おもちゃなどの古い持ち物を捨ててしまわないのは、イギリスがそのことについてコメントするのを嫌がっているからではなく、ましてや思い出が大切だからでもなく、単純に、ここは一時の滞在場所でしかないからだ、と思う。
 むろん、大切に大切に守り、心の慰めとしてきた「弟の面影」を無造作に捨てられてしまったら、怒ってはいけないと知りつつも、自分は悲しむのだろう、と掃除機のスイッチを入れながらイギリスは思った。自分勝手なことだ。「所有者」たるアメリカがこれらをどう処分しようが勝手だし、イギリスが妙な思い入れを抱いているのも気持ちの悪い話だろう。
 ともかく、アメリカはもうこの家の住人ではない。それは父母が帰ってきてからも、再び出て行ってからも、何も変わっていない。
 ただ彼は、イギリスが「寂しい」とか「会いたい」とか感じるのを見計らったようにやってきては、一人には広すぎるこの家を賑やかして泊まっていくのだった。
 それくらいの距離感がいい。たぶん毎日一緒にいたら、ついつい世話を焼きたくなって、アメリカが望むような態度は取れないだろうから。
 ――今日は来ないだろうな、昨日来たばっかりだし。
 掃除の手を止めて、そっとベッドに腰を下ろす。イギリスがこのベッドで抱かれるのを嫌がるから、昨日はこのベッドは使わなかった。いつだったか「じゃあもうこのベッド、必要ないじゃないか」だなんて自分本位なことを言っていたっけ。彼の中にもはや別々に寝るという選択肢はないらしかった。「俺だってそう毎日毎日突っ込まれてられるかっつーの」という抗議はものの見事に無視された。
 枕もとに放り投げられた、よくわからない雑誌をつまみ上げる。ギターだとかバイクだとかシューズだとか、若者が興味を持ちそうな記事が並んでいた。
 特に没頭していたわけでもなかったが、ふと、ギィ、とドアが音を立てたので、びっくりして顔を上げる。一人暮らしで、自分以外が立てる音は結構怖い。
「……あー、見つかっちゃった……」
 ドアの隙間から、悪びれない青い瞳が覗いている。まぁ、どうせこんなことだろうとは思ったが、正直かなりびっくりしている。アメリカが、こんなに頻繁に自分を訪れてくれるなんて。
「お前、いつからそんなとこ立ってんだよ……声かけろよ」
 でも悔しいから、表情には出さないようにと努力するのだけれど、きっと筒抜けなのだろう。
「んー、『今日は来ないだろうな、昨日来たばっかりだし』くらいからかな」
「え、俺、声に……」
 それでは筒抜けどころか自ら公表していたことになるではないか。
「出してたよ」
 呆れたように言い放って(本当に呆れた行動を取っているのは間違いなく向こうだとイギリスは思うのだが)、アメリカはイギリスの隣に腰を下ろした。「隣」というか、イギリスを押しのけるみたいにして密着してきた。だいぶ尋常じゃない行動だと思う。いつだったか「恋人同士じゃ普通なんだよ」とか訳のわからないことを言っていたっけ。慣れないイギリスはいつも、こんな突飛な行動に緊張しっぱなしだ。けれど脇へ寄ってやるのも癪だから、意地を張るようにそのまま密着していた。
 そんなことをしていたら、調子に乗ったアメリカに、肩を抱かれる。
「そういえば君、さ。俺が行方不明だったあいだ、このベッドで、色々してただろ?」
「なんのことだ」
 なんだか後ろめたいことを指摘されたような気分で空とぼける。生徒会の業務でならいくらでも平然と嘘をつけるのに、どうしてこういう場面ではそのスキルが発揮できないのだろう。我ながら毎度、残念である。
 案の定、アメリカはニヤニヤと相好を崩してイギリスを見下ろしていた。
「今日もさ、何かしないかなー、と思って見てたんだよね。見つかっちゃったけど」
 可愛い可愛い弟がいなくなって寂しがるのは当然ではないか。どうして弟を思い出しながら、宿題をしたり予習をしたり、時間をつぶしてはいけないのか、とイギリスは思うのだが、世間一般に言わせればイギリスのそうした行動は普通ではないらしいので黙っていた。アメリカが頻繁に遊びに来るようになってからは、気持ち悪いと思われても嫌なので、そういった痕跡は一切排除したはずだが。
「何かって」
 まぁ、一度ここで勉強中にうたたねしてしまったところを目撃されたのだからもう遅いということだろうが。そういえばあの時は――。
 一人、急上昇した体温を持て余していると、アメリカはぺろりと唇を潤しながら、言った。
「俺を思い出して、一人エッチとか――痛!」
「ど、ど、どんだけ変態だ俺はァアア!」
「いいじゃないか、ちょっとここで見ててあげるから、再現してよ。俺がいない間、俺のベッドで何してたんだい?」
 前もそんな言い合いをしてケンカ……というか、なんだ、それだ、ナニを、したような、気がするが……。
 頭の中に蘇ってきた思い出を消し飛ばすように勢いよく首を振る。そんなイギリスをアメリカは笑った。
「こうやってうつ伏せになって、枕のところにノートを広げて、たまに足をバタバタしたりした? 飽きたらこの、刺繍のところを指でなぞって『アメリカ……』ってため息つくんだろ? はい、やって! 何なら君の所から勉強道具持ってこようか?」
 すべて図星だったので、まったく返す言葉がない。
 こいつホントに見てたんじゃないだろうか。そんな、もし見られていたら、今すぐに死ねる。
「やらねぇよ、つかそんなことやってねぇし……ってうわっ!」
 無理やり圧し掛かられて、うつ伏せの体勢を取らされる。そのまま腰にアメリカが跨ってしまったから、イギリスは身動きすらできない。
 いざこの体勢になると、アメリカアメリカとバカみたいに呟きながら寂しさを紛らわせていた日々が鮮烈に思い出されて、顔も上げられなかった。ぎゅっとシーツに押し付けて、赤みが引くのを待つ。
「……っ!」
 そんなイギリスを精一杯バカにしているに違いないのに、上にいるアメリカはずいぶん静かだった。
「おい、いい加減どけよ!」
 ばたばたと、手も足も思い切り動かしてみるけれど、アメリカはびくともしない。無理矢理上半身を起こして体を捩じれば、俯くアメリカの顔が一瞬だけ、目に入った、のだが。
「……お前、真っ赤だぞ」
 どう指摘したものやら、こちらの体温までまた上がったような気がする。
「……君は、ここでヤるの嫌がるけど……俺、なんだか」
 ああ、この雰囲気は不穏だ。いけない。
「ちょ、やだって、マジで!」
「君が煽るからいけないんじゃないか!」
「いつ煽ったよ! お前がやれっていうから……! ってか昨日もヤッただろ、やだって、やだ! 俺、掃除中だし!」
 端から見ればムードのかけらも何もない口げんかのようだが、この体勢は明らかに不利であったし、もうとっくに、体は準備ができている。何度も重ねた体は、もうそんなことすらわかるようになってしまった。
「日本が言ってたよ、『嫌よ嫌よも……』」
「あああもう! このバカ!」
 御託はいいから早くしろ、とは、いつまで経っても言えるようにはならないけれど。



 拝啓 どこにいるのかわからない無責任な両親へ

 俺はちっとも 寂しくなんかありません
 どうぞ地の果てでも海の底でも 二人でイチャイチャしていてください
 こっちもイチャイチャしてるんだぞ、って、しねぇよバカァ!

 邪魔が入りましたが 敬具
 苦労気質の長男より
















 この設定、読み直せば読み直すほどアホくさくて楽しいですね(……)。
 少女マンガによくこういうのあるよね。そういうところがいいんだとおもいます。

 もゆ様、大変お待たせいたしました! 楽しくおかしく、を目指して表です……このあとは御想像にお任せしますv なんて無責任な逃げ方……!
 我が家の学ヘタ好きだと言ってくださってとっても嬉しかったです!! 私もこんな高校生がいたらすっごく愛しいです(笑)。
 ありがとうございましたv


(2009/1/30)



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