ふっと目覚めれば、トルコが祈りを捧げているのが見えた。
 何百年と見続けた、それは日常の風景のはずだったのに、なぜか頬を熱いものが止め処なく伝う。
 それは重力に従って落ち、色鮮やかな寝具に吸い込まれていった。
 地に額をつけた彼の目が、こちらを向くことはない。それが分かっていたから、ギリシャはその雫を拭うこともしなかった。
 礼拝の時間、ギリシャはいつも、こうして独り考え事をするのだった。もちろん支配者たちは祈りを捧げているのだし、神と向き合う時間に、ギリシャごときを気にかける暇もない。
 誰にも振り向かれずに、ひとり、泣いたとしても、それは彼らの目には入らない。この世界では、誰一人それを認識しない。
 静かな、静かな時間だった。
 ――救済を。
 これから訪れる波乱の果てに、ギリシャは、ギリシャたちは、救済を見出すことができるだろうか。「それは与えられるものではない、創り出すものだ」――新たな価値観が身を苛んでいる。
 間もなく、停滞の時代が終わりを告げる。
 茫々と与えられた庇護とも愛とも放任とも呼べない種類のもの。己と彼のあいだに漂っていた、確固たる名前を持たない曖昧なすべては、消え果てる。すべては。ああ、すべて、すべてだった。


 お前は裏切ったのではない、迷っていただけなのだよ、と、北ではなく西から来た勇者は言った。

 オリエンタリズム全開でお届けいたしました……。100%が思い込みでできています。
 エロシーンの元ネタは限定☆信号のぱんぱ様がお話していらっしゃったものです。雨が降ってて、「泣いてもわかりゃしねぇよ」ってトルコさんが言う、という……「ちょ、何ですかその萌シチュ! 書きたいです!!」と食いついたら、快くOKしてくださいました。お優しすぎる…!
 なのにその素晴らしい原案をまったく生かし切れなかった私はなんて残念な子なんでしょう……もっと「トルコさんかっけぇえええ!」みたいな話になる予定でしたorz
 なんか変なところがあっても、雰囲気で読み流してください…orz
(2008/7/11)
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